大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)173号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕さらに原告は、占有回収の訴の要件を具備しており、しかも現実に占有回収訴訟を提起しているから、民法二〇三条但書によつて本件建物の占有権を失つていないと主張する。原告がその主張のような占有回収訴訟を提起していることは、被告の明らかに争わないところであるから、これを自白したものとみなされる。そして、成立に争いない甲第六三号証および記録上明らかな本件訴訟の提起年月日によれば、原告は右占有回収の請求を予備的請求とし、占有保持の請求を主位的請求として、法定の出訴期間内に右訴訟を提起したものであるところ、第一審では本件被告に対しては主位的請求である占有保持の訴が認容され、初枝を被告とした請求は棄却されたことが認められる。

しかし、占有者が占有物の所持を失つているにもかかわらず、民法二〇三条但書で占有権の存続が擬制されるためには、占有者が占有回収訴訟で勝訴し、もしくは勝訴判決に代る内容の和解、調停ないし返還約束が成立し、かつ遅滞なく現実に占有を回復したことを要件とするものと解すべきである。

原告は、占有回収の訴を提起できる要件が存在し、かつ訴を提起したならば請求が理由あるものとして認容されると判断した場合には、占有回収の訴の提起がなくとも民法二〇三条但書の適用を認めて判断すべきであり、そうでないとしても、占有回収の訴が提起されればその勝訴判決の確定をまつまでもなく、他の事件の受訴裁判所でも右法条を適用して判断すべきであると主張するけれども、所論のとおり解するときは、占有回収訴訟が出訴期間内に提起されなかつた場合、出訴期間は遵守されても最終的に占有者が敗訴した場合には、いずれも民法二〇三条但書と矛盾する結果を許すことになり、とうてい首肯できない。それ故、前に説示したとおり、占有回収訴訟で占有者の勝訴(またはこれと同視できる事実)が確定し、占有者の敗訴に終る可能性がなくなつた後でなければ、民法二〇三条但書による占有の継続の擬制を認めるべきではない。原告は、占有回収訴訟の確定をまたなければならないとすれば、その間は不当な侵害を甘受しなければならない不都合を生じると言うけれども、本件仮処分に対しては異議を起す途もあり、必ずしも絶対的に甘受しなければならないものではない(現に原告も仮処分異議を提起し、原告の敗訴に終つたことは、成立に争いない乙第三八号証により明らかである)。所論は採用しない。(山本和敏)

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